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2014/10/10

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"SR600x3" 第三弾「NIHON ALPEN:日本アルプス」 Masahiko Mifuneチャレンジレポート

まぁ想像していたことだが、さすがに立て続けに2回もSR600をこなすと回復していないことを実感する。 3回目を前にすべての行動にも時間がかかるし、判断力・決断力が鈍ってくる。たかだか朝食を何にしようか?というたったそれだけのことでも即決できない。

北関東を終えてホテルに戻って、すぐに洗濯をしてシャワーを浴びて就寝。 朝にバイクメンテナンス、改めてバイクをチェックしていると1200kmをロードでほとんど同じ状態で走るというのは非常に厳しいということがうかがい知れる。 ブレーキシューもかなり摩耗していたので交換、チェンオイルもかなり抜けているのでやや重めのものを注油。 バーテープも擦れて摩耗している。 何よりもエンジンが一番消耗しているのだが・・・

今回の3つのSR600チャレンジの中で、一番天気が崩れてほしくなかったのがこの日本アルプス。
最初は「予定通り」天気は回復するはずだったのに、直前の天気予報は初日は雨。
そして2日目は回復。 ただ初日から2日目にかけてはかなりよろしくないようだ。 八王子のホテルを出発し、山梨県に入るころと雨が降ったりやんだり。 太平洋側は早速激しく雨のようだ。天気はもつのか?もたないのか? 小淵沢に到着し準備開始。
空気はひんやりとしていて乾燥している。これは多分しばらくは降らないかな? ここまで2つともスタートから湿度が高く、割と序盤から雨が降ったりやんだりのコンディションの中を走っている。 やはり降らない方がいいし気持ち的には降っても走れるが最初から雨だけを想定なんてできない。 結局のところ、雨予報でも雨の中を走るというのはすごく体力もだが精神的にも消耗していて、体感的にはドライコンディションと比べて倍の距離を走っているような消耗度合いだ。

0時に小淵沢をスタートし長野県を目指す。 国道は交通量多めで大型トラックが幾度と抜いていく。 反射ベストに明るい尾灯、大型車のドライバーもこちらからのアピールがきちんとできているならば、最近はそうそう攻撃的な運転はしてこない。 サイクリストのマナー向上がドライバーのマナー向上にも影響していると思う。 自分が運転するときでも、信号を無視したりフラフラと走っていたり、夜に無灯火や無灯火と変わらないような暗い装備だと「危ないなぁ!」と落ち着いた気持ちでは運転できない。

杖突峠の入り口近くのコンビニで水や補給食を買い足して、これから始まる南アルプスに備える。 もしかすると最悪の場合はこの時点で雨が降っていると予想していたが、空気もあまり湿りがない。 それならホットコーヒーでも飲んで、少し気持ちにゆとりを持って走るのも悪くない、と長めのストップ。 杖突峠にアタック開始し約2kmでまさかの雨・・・なんでやねん・・・
峠途中でレインジャケットを着て、シューズカバーも履く。 真っ暗で何も見えない杖突峠、中部600の時は長く感じたのに今日はなぜだかあっという間に頂上だった。 下っているうちに雨は止んで路面はドライ。 そうなってくるとレインウェアすべてが鬱陶しい。高遠の手前、明るい街灯のある駐車スペースでレインウェアをすべて脱ぎ、次に切るタイミングに備えて水分を拭き取ってきれいに畳む。 そして高遠を通過したら、さらに本格的な雨・・・結局30分も持たずに激しい雨に。 バス停に入り込み、すぐさまレインウェア関係を再び着込んで分杭峠を目指す。
分杭峠は急こう配。進むほどに傾斜はきつく厳しさを増す。 周りが少し明るく、と言っても雨の中なのですっきりとした明るさではないが。 頂上で写真を撮るのもつらい雨。8月の雨って心地いいはずなのに、寒さすら感じる。そして何よりこの数日間ずっと雨に当たっているからか、体がなんとなく湿度に疲れているような感覚だ。 乾燥している日が続くと、きっと雨でも気持ち良いのだろうが、いっまは不快感で吐き気すら感じる。

下りで後輪パンク。と同時にゲリラ豪雨のような雨。 どこにも屋根などない。チューブ交換もままならない。どうする?? 後輪パンクしたまま雨宿りそしてチューブ交換できそうな場所まで下るしかない。 こういう時はチューブラーホイールの方が安全だ。
クリンチャーホイールなら、きっとタイヤビードを引っかける部分が変形して、ホイールをダメにしてしまっていただろう。 多分10km近い距離を下り、工場の大きな屋根を発見。まだ営業はしていない時間だし、屋根の下を拝借。 リムセメントを塗りタイヤを貼る。そしてしばらくは乾かすつもりで休憩。この間に雨が止んでくれたらいいのに。 結局雨足が弱まることもなく、ただひたすら雨の音を聞きながら時間が過ぎていく。
そして30分ほどストップした後、再スタート。 地蔵峠に差し掛かると少し空腹感を感じ始める。 雨で体温も奪われているし、諏訪から結構な時間を走り続けている。 (距離はそんなたいしたことはないのだが・・・)

自動販売機でコーラでも買うか、と思うが自動販売機すらない。
さすがは南アルプス、ある意味日本で最も険しいと言って過言ではない。 地蔵峠からしらびそ峠への蛇洞林道へ。 少し雨が止んできたのか、周りの山々が蒸気を発し神秘的な景色を見せ始める。 登っても登っても終わらない。標高はそんなになかった(と言ってもしらびそは1800mあるが)標高以上に険しさを感じずにはいられない。

あと頂上まで2km、急に太陽が出て路面もドライに。 よっしゃ〜〜〜!!と太陽の光で力がみなぎったと思ったらすぐ曇り空・・・
頂上ではまだ売店も開いておらず、ひとまずコーラを飲む。 こういうときのコーラは本当に美味い。
ここからはダウンヒル。

雨やブレーキシューそして泥などの影響でタイヤにはかなりの負担。おまけにブレーキの熱でタイヤのありとあらゆる接着剤が緩んできている。 バルブのあたりがいがんできたりタイヤも横に回ってきたりしている。
そしてブレーキシューもかなり摩耗。下っている途中で蕎麦屋を発見し飛び込む。 よく言えば自然と一心同体、悪く言えば人としての機能を一切遮断し、まるで植物か何かのような感覚。 今ままで自分が生きてきた時系列とは全く合致しない、ずれた時空のはざまで一人ぼっちで生きているかのような孤独感。一人でこんな自然の中を走っているとそんな気持ちにさせられる。
冷え切った体で蕎麦屋へ。暖かいお茶を出され飲んだ瞬間、今まで見えていた薄いモノクロ調の景色にはっきりくっきりと色が入り込んでいく。 冷静に自分の機能が作動するまでの間、お店の中で落ち着く。
そして再び雨の降る外へ。
タイヤもブレーキシューもすごい勢いで摩耗している。 そして自分自身も・・・
人生でこんなに短期間の間、雨で自分を消耗させたことはない。 南信濃まで降りると雨はやみ路面は再びドライ。 阿南から国道151号。ブルベでも通り慣れた道だ。 走りやすいと思っていたのもつかの間、ゲリラ豪雨なのか相当激しい雨に見舞われる。 また再びレインウェアか・・・
何回着ては脱いでを繰り返したことか。 天竜峡のコンビニで食事にする。 雨が激しすぎて食べることもままならない。コンビニの軒先に体を入れるべく、壁に体を密着して食べる。 45歳にもなって何をやっているんだ?と思う瞬間だが仕方ない。

雨は一向にやむ気配はないのでスタート。 飯田の駅を目指して少しずつ登っていく。なんとなく自転車に違和感を感じる。 さっきは大雨でとにかく雨宿りしたいと思って走っていたので気づかなかったのかもしれないが、自転車の消耗度は限界を越えている。 そもそもロードバイクで1回の連続走行距離なんて、ミラノ〜サンレモの300kmほどが最長だ。 要は300kmを走りきれるバイクであればレースとしては問題ない。 そう考えれば消耗品やホイールを入れ替えただけで1000km以上を過酷なコンディションで走り続ける方が常識からかけ離れている行為なんだと思えてくる。 プーリーもチェーンも、ギヤもかなり摩耗している。 SR600x3に備えて、かなりのパーツを新調したのに・・・
飯田駅で止まってバイクをチェック。 少なくともパンク修理で使ったスペアタイヤはもう使えそうにもないぐらいにボロボロだ。

一か八かバイクが完全に悲鳴を上げるまで走るのも一つの方法。
今から飯田峠そして大平峠を越えて下呂、高山に抜けて乗鞍に向けて走るには選択したくない方法だ。 天気予報ではこれから雨量はどんどん多くなっていく。夜半がピークのようだ。
ある意味もっとも最悪な場所で最悪の究極の選択、しかし逆に最も安全に危険回避する逃げ道を用意してもらっているともいえる場所に今きている。 走行続行するには必要な機材を飯田で調達したとして、走行再会して乗鞍の通行規制時間内でクリアーするには休憩はできない。 このまま走り出せば時間的には余裕だが、下手をすると本当に危険な状況に陥ってしまう。そしてその可能性は今までの経験で相当高い。

いったいどれぐらいのい時間が過ぎただろう。
そしてその結果、選んだ答えはここで中断、リタイヤと言う選択。
自分の中で一番考えていなかった選択だ。
しかしもしここでトラブルがあったとすれば、それは自分の今までの活動を応援してくれている人たちにも迷惑がかかるし、こうやって楽しませてもらっているブルベを楽しんでいる他の人たちにも迷惑がかかってしまう。 そういうことは絶対にあってはいけない。 好きで乗っている自転車、されど多くの人に支えられていて自分一人じゃない。
何度も何度も「一か八かで進んでも、きっと大丈夫。今まで何もなかったから」と進む選択をしたが、冷静に見ている自分が抑制している。 ここに至るまで、本当にすごく長い時間を要した。 そして結論を出してから、リタイヤをすると決断して、撤収をしているときですら「やっぱりここから再度走り出そうか」と・・・

全行程1800km中1400km走行。 これが長いのか短いのかは、自分にはわからない。

翌日。
布団に入った状態で目が覚めると、今までのすべてが夢だったかのように感じてしまう。 長いようで短かかった自分への挑戦で過ぎて行った8日間。 思いつきから始まったチャレンジだが、これはそもそもクリアーすることができるミッションだったのだろうか?
その答えに、いつか必ず、遠くない将来に必ず辿りつきたい・・・

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日本アルプスのスタートは小淵沢駅。 写真に自転車と時計を映しこむこと。 意外と難しい(笑)
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杖突峠を下り、高遠を前に雨が止んだのでレインウェアを脱ぐ。 真夜中にレインウェアを脱いでいる人がこんなところにいたら、さぞかし気持ち悪いだろう・・・
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高遠の手前、こんな真夜中に警察が検問・・・と思ったらマネキンだった。 が、不気味すぎる
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まだ夜が明けきらない時間に分杭峠へ。
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しらびそ峠へ向けて進んでいくと、周りの山々が神秘的に見えてきて、自分という人間の小ささを感じ、自然の強さに押しつぶされそうになる。
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頂上を前にあちこちで落石の痕が。 こんなのがいきなり落ちてきたと思ったら・・・
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しらびそ峠を下っていた時に見つけた蕎麦屋。命の蕎麦だ(笑)
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しらびそ峠
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南信濃へ向けての下りは、つずら折れの厳しい峠道。
画像:3-10
飯田駅に辿り着きリタイヤを決めた